中間年度に当たる本年度は、基礎的資料整備の完了を目指し、また収集された資料の内容分析を主とする研究を発展させた。具体的な研究実績は以下の通りである。 (1)前年度より継続して史料調査・収集作業を研究代表者の吉田厚子と連携研究者の吉田忠双方が行った。本年度は、地図・地球儀など器物資料についての調査も行い、各地に分散している関連資料、世界地図コレクションなどの研究遂行に不可欠な資料の不足箇所を点検し、未収集の部分について補完作業を行った。 (2)前年度に続きオランダに派遣した吉田忠は、ライデン大学図書館及びユトレヒト大学図書館地図室等で、地球儀・天球儀関連資料や北方関係史料等を調査し、一部は写真撮影にて収集した。また地球儀および地図製作につきオランダの研究者と意見交換をした。 (3)前年度までに調査・収集が完了した文献史料の分析を行った。吉田厚子は、地図・地球儀について、北方の地形・形状に着目し、知識や情報の系統を分析解明した。加えて、地名表記等の解析を通じて、江戸時代の知識人が行った地図翻刻作業の過程や、彼らが参考にした原図の製作年代を検証し、当該期の日本の北方に関する地理的情報収集の実態と得られた情報内容の史的意義を明らかにしていった。吉田忠は、地球儀と天球儀の歴史に焦点を絞り、オランダ語原本における北方に関する地理情報が何であったかを、当時舶載された代表的蘭書について調査し、検討した。 (4)得られた研究成果を京都大学で開催の関連研究大会等や研究紀要等で公表した。
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