最終年度に当たる本年度は、前年度より継続中の発展的研究作業の完成を目指し、3年間にわたる研究成果の総合化をはかった。 (1)研究遂行に不可欠な資料の不足箇所を点検し、未収集の部分について補完作業を行った。また、前年度までに調査・収集が完了した文献史料の分析を継続した。研究代表者の吉田厚子は、地図・地球儀について、北方の地形・形状に着目し、知識や情報の系統を分析解明した。加えて、地名表記等の解析を通じて、江戸時代の知識人が行った地図翻刻作業の過程や、彼らが参考にした原図の製作年代を検証し、当該期の日本の北方に関する地理的情報収集の実態と得られた情報内容の史的意義を明らかにした。連携研究者の吉田忠は、前年度に引き続き、地球儀と天球儀の歴史に焦点を絞るとともに、オランダ語原本における北方に関する地理情報が何であったかを、当時舶載された代表的蘭書について調査し、検討した。その上で、研究成果全体の総括を行って取りまとめ、「江戸時代の日本の北方に関する地理的情報収集の実態と得られた情報の歴史的意義」に関する新知見を提示できるようにつとめた。 (2)研究代表者及び連携研究者双方が、津市図書館、津市埋蔵文化財センターにおいて、伊勢商人の稲垣家に残る江戸時代の北方地理・天文関係資料の調査、および論文作成・掲載用の写真撮影をおこなった。 (3)これまでの2年次にわたって行ってきた調査・研究を補完し、研究代表者及び連携研究者双方の成果の総合化をはかった。それらの成果は、各研究者が論文化するとともに、京都大学で開催の実学資料研究会2010年度大会・洋学史研究会3月例会京都合同研究大会などで公表した。 (4)3年次にわたり行われた本研究の全成果について、研究成果報告書を電子媒体で作成した。
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