初年度にあたるため、史料収集に重点を置いた。隔月に一回程度、防衛省防衛研究所図書館で史料調査にあたり、寄贈・寄託資料群のなかから、憲兵関係を中心に閲覧・複写をした。とりわけ『憲兵令達集』第一・二巻、「内地憲兵関係復員資料」などからは、貴重な情報を引き出すことができそうである。また、国会図書館・早稲田大学図書館・昭和館などでも関係史料を集めることができた。 すでに、本研究に直接つながるものとして、撫順戦犯管理所の戦犯たちの供述書を読む研究会に参加し、憲兵隊関係を担当していたため、ひきつづき、その史料補充に努め、おおよそ骨格が整ってきた。すでにレジュメは完成しているので、それをどのように文章化し、発表するかを、来年度以降の課題としたい。 纐纈厚『憲兵政治-監視と桐喝の時代』が刊行された。現状への問題関心から、初めて憲兵についての概説書となり、示唆されることろは多いとはいえ、既存の史料に依拠しているため、その具体的実相を明らかにするに至っていない。本研究の意義は依然として大きい。 来年度以降は、史料収集を引きつづき進めるとともに、関東憲兵隊についてまとめることを突破口に、憲兵の構造と実態について概観できるようにしたい。社会主義運動・思想の抑圧という機能はいうまでもないが、一九三〇年代以降の一般民衆に対する思想統制・動員の様相を明らかにすることが課題となる。また、植民地における憲兵や軍占領地域の軍政などとの関連などを、どのように整理して考えるのかが、焦点となる。
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