第三年度となる本年度は、これまで参加してきた二つの研究会のまとめの仕事をすることができた。一つは、侵略史研究会で、近刊の『中国侵略の証言たち--「認罪」の記録を読む--』(岩波新書)の第二章第二節「「満州国」の治安体制」を執筆した。これは「1 建国当初の治安体制 2 憲兵・警察・司法統治の進展 3 「治安粛正」の最終段階」という構成で、関東憲兵隊創設から解体までを論じている。 もう一つは、合作社事件研究会で、元関係憲兵隊員が所蔵していた「合作社事件」の史料集を復刻し(不二出版、二〇〇九年一二月)、解説の一部として、「満洲国」司法体制および関東憲兵隊の概観、供述調書の分析を担当している。本史料により、思想弾圧事件について、はじめて詳細に検挙から司法処分の過程が明らかになった。 以上のほかに、主に防衛省防衛研究所図書館において、軍・憲兵の治安機能に関する史料収集に努めた。とくに海軍関係の思想対策・教育について、新たな史料を得ることができた。 また、最終年度に向けて、報告書の準備にとりかかり、憲兵を中心とした大まかな構想を得るに至った。
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