最終年度となる本年度は、これまで参加してきた侵略史研究会の共同研究の成果を、『中国侵略の証言たち--「認罪」の記録を読む--』(岩波新書、二〇一〇年四月)として公刊した。私は、本科研費での史料収集をもとに、その第二章第二節「「満州国」の治安体制」を執筆し、関東憲兵隊創設から解体までを「1 建国当初の治安体制 2 憲兵・警察・司法統治の進展 3 「治安粛正」の最終段階」という構成で論じている。その後、研究会では、戦犯の「供述書」の史料集編纂を準催している。もう一つ参加している合作社事件研究会では、「合作社事件」の史料集復刻後、あらためて「合作社」全体像の把握と、「小島憲兵」所蔵史料の再点検をおこなっている。 以上のほかに、主に防衛省防衛研究所図書館において、軍・憲兵の治安機能に関する史料収集に努めた。 また、最終年度に向けて、報告書の準備にとりかかり、憲兵を中心とした大まかな構想を得るに至った。大きく、「憲兵」の研究と「軍の治安機能」についてまとめたい。前者は、その創設から解体までの通史的な叙述を試みる。現時点では、「1.創設2.社会運動抑圧の開始3.思想憲兵の始動と展開4.関東憲兵隊から「支那」憲兵隊へ5.戦時下の思想憲兵6.憲兵の解体」という構成を予定している。後者については、自由民権・初期社会主義思想・運動の軍隊への侵入警戒、1920年代の「地方」の思想悪化・軍隊の動揺、30年代における軍隊内の「思想善導」、陸軍省新聞班などの活動、在郷軍人会における治安機能などがポイントになると予想している。
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