本研究は、17〜18世紀における触穢観念の社会的受容過程を、朝廷・神社/幕府・藩との関係に焦点を当てて再検討すること、そして19世紀における触穢観念の変質とその社会的影響を、朝廷/神社/民衆との関係において明らかにすることを目的としたものである。これは本来的に朝廷・神社世界のものである触穢観念が、いつどのように近世社会へ受容されたのか、そしてこの観念がその後どのように変容したのかを、史料に即して、構造的かつ動態的に検討するものといえる。 本年度には、17〜18世紀における朝廷・神社の触穢観念の問題、特に触穢観念をめぐる朝廷と京都の神社との関係の解明に取り組んだ。 まず第一に、『賀茂別雷神社文書目録』(京都府教育委員会編、2003)の刊行により文書の全容が明らかにされた上賀茂神社(賀茂別雷神社)への史料調査をおこなった。その成果としては、同神社の公的記録である「社中日次記」の、寛文年間から寛保年間(1665-1742)までの関係記事について、撮影・複写をおこなうことができた。このほか、国立公文書館などにおいても朝廷・神社関係資料を収集した。 上記の調査を踏まえて、関係史料の整理・分析を開始している。現時点では具体的な研究成果を公にできてはいないが、今後の研究を進展させるための基本史料を入手し、その研究基盤を作ることができたといえる。
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