本研究は、17〜18世紀における触穢観念の社会的受容過程を、朝廷・神社/幕府・藩との関係に焦点を当てて再検討すること、そして19世紀における触穢観念の変質とその社会的影響を、朝廷/神社/民衆との関係において明らかにすることを目的としたものである。 これは本来的に朝廷・神社世界のものである触穢観念が、いつ、どのように近世社会へ受容されたのか、そしでこの観念が、その後どのように変容したのかを、史料に即して、構造的かつ動態的に検討するものといえる。 本年度には、前年に引き続き、17〜18世紀における朝廷・神社の触穢観念の問題、特に触穢観念をめぐる朝廷と京都の神社との関係について検討するとともに、19世紀における触穢観念の変質の問題について、京都の神社と社会との関係を中心に検討をおこなった。 まず第一に、国立公文書館などへの史料調査を4回おこない、「公通記」をはじめとする朝廷・神社関係資料を収集した。次に前年から実施している調査を踏まえて、賀茂別雷神社(上賀茂神社)関係文書などの紙焼き版を作成し、関係史料の整理・分析をおこなった。 さらに、その成果の一部を、第2回近世の天皇・朝廷研究会大会において報告するとともに、19世紀における触穢観念の変質の問題を論じた「近世の触穢観念と神社・祭礼」(『近世の宗教と社会』2、吉川弘文館)および単著『近世の死と政治文化』(吉川弘文館、2009)として公表している。
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