研究概要 |
本年度は、「茶都」と呼ばれている東京、名古屋、京都、金沢に出張し、基本的な資料類の調査収集作業を重点的に行った。この結果、20点程度であった近代以降の「茶会記」を新たに30点余確認した。尚、これら「茶会記」の一部は古書市場、文献複写、デジカメ撮影によって収集した。又、近代数寄者に関する書籍を古書を含めて購入し、近代数寄者の活動を網羅的に調べた。資料類の吟味作業と資料収集は著しく進捗した。 更に、資料収集作業と平行させて高橋義雄の諸「茶会記」、安田善次郎『松翁茶会記』、山本麻渓『古今茶湯集』などのデータのパーソナルコンピュータへの入力作業を開始し、第1次データベースとして延べ8,900余人の亭主並びに茶客を把握した。又、第2次データベースとして430人余の近代茶人及び道具商などの、生没年、屋号、茶号、流派、学歴、爵位、議員歴、役職歴などを内容とする基本名簿を作成した。これらのデータベースは次年度以降の作業によって一層の充実が期待される。 本年度は、資料の調査収集作業と平行して、一部のデータを使用し大正初期から昭和10年代に至る近代数寄者のネットワーク形成と存在形態を明らかにした論文「近代数寄者のネットワークと存在形態」を発表し、通説への批判的な見解を提示した。次いで、明治期の実態を解明する論文「茶の湯復興期のネットワーク」の執筆を進めている。
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