本年度は、第一に、昨年度行った寺社テクスト(主に寺社縁起、年中行事等)の史料残存調査を継続し、データの精度を高めることを行った。昨年度のデータは『群書類従』『続群書類従』『国書総目録』を対象とした収集であったが、本年度は全国の県史等に収録されている寺社テクストを収集し、その時代別傾向を検討した。昨年度のデータが『国書総目録』471点、『群書類従』『続群書類従』144点であるのに対して、県史データは533点であり、単純に計算すれば『国書総目録』に加えて62点を追加することができたといえる。もっともこの県史データは北海道・沖縄以外にも東京・京都・奈良・鳥取・島根・高知・徳島を除いたものであり、これら各県のデータは今後の都道府県史刊行によって追加されていくべきものである。 第二に、寺社縁起等に関する過去の研究を把握するため、論文目録を『史学雑誌』の論文目録から過去にさかのぼって調査した。これらのデータは名古屋大学文学部日本史研究室のHP(http://www.lit.nagoya-u.ac.jp/~nihonshi)において公開した。 第三に、以上の大量のデータによって古代から中世全体の史料の分布を俯瞰的に抑え、各時代の傾向を検討した。また、とくに注目している鎌倉・南北朝期の寺院テクストについて、国家(朝廷・幕府)の寺社政策、寺社権門の内部事情、および、古文書等の史料と縁起、縁起絵巻との相互連関について東大寺等個別権門寺院を対象に、改めて検討した。
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