研究概要 |
まず基礎作業として,全国の資料保存機関に収蔵される道中記関連資料の収集と歴史街道の調査を進めた。今年度は愛媛県(2007年7月),富山県(9月),福島県会津地方(ll月),埼玉県(2008年2月),長崎県、福岡県(3月)で実施し,道中日記を新たに30数点見出すなどの成果があった。その過程で関連資料たる納経帳や道中案内記の重要性が判明し,今後も引き続き調査作業が必要となっている。また,伊勢参宮街道や熊野街道沿いの調査は,自治体史や他の文化事業と並行して実施し,熊野街道沿いの最大規模の文書群、尾鷲組大庄屋文書の調査を終えるなどの成果をあげた。同文書中の200冊にのぼる算用帳から旅人への救済記録を整理する作業を,アルバイトを雇用しつつ,進めている。 分析成果の公表としては,まず2007年5月に熊野市で開催された全国歴史の道会議において,「熊野街道『伊勢路』の特質-江戸時代の道中記から-」と題して講演を行い,道中記から見られる参詣街道の姿,また特に熊野街道に関しては道の多様性(不安定性)という論点について,本研究における基本的な見通しを示した。またll月23日に開催された国際熊野学会において,「江戸時代の巡礼たちと伊勢路-道中記と地域史料から-」と題して研究報告をし,京都、大坂の旅籠屋による参宮街道沿いでの客引きの様相と旅人や地域社会への影響,参宮街道、大和越えの街道と熊野街道との相違,また地域史料を用いて,道中日記の世界とは異なる貧しき旅人の実態などについて検証した。 収集した道中日記を地域史料として用いる試みとして,250点の道中記(20点の案内記を含む)から『道中記に描かれた三木里〜曽根次郎坂太郎坂』を編集、刊行した。
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