本年度は、研究全体の総括として一年早く2009年10月3日明治維新史学会例会(明治大学)と11月14日明治維新史学会大会(神奈川県公文書館)において、「大名家の祖先顕彰と政治改革」という研究報告を行って、最終年度に向けての方向性を獲得することかできた。当日は、藩祖をめぐる研究についての忌憚のない意見を、明治維新期の専門家などからいただいた。長州藩に関する点は、政治的な側面と、宗教・儀礼的な側面とのすりあわせも含めてある程度の完成度を得ることかできたが、諸藩を含めた全体像についてはなお多くの課題があることが明らかになったように思われる。与えられた課題については、最終年度を通じて修正、補足していく予定である。 そこで、並行して資料調査は、近世大名家のなかでも、朝鮮と徳川幕府との仲介を担う特殊な立場にある宗家=対馬藩の調査の調査を9月に実施した。また、あわせて柳川藩の史料調査、福岡藩の史料調査を実施した。柳川藩立花家については柳川古文書舘で調査を実施し、福岡藩黒田家については福岡市立博物館の調査を実施、それぞれ専門家からの助言と関連する資料を得ることができた。この成果が、さきの本研究の課題に有益と思われるが、なお主要な諸藩の調査を残しており、来年度の課題となっている。 とろこで、当初予定していた海外調査は、新型インフルエンザによる学内の厳しい規制のため渡航を断念せざるを得なかった。来年度、予定を変更して東京大学史料編纂所や横浜開港資料館の資料調査によって、その部分を補う予定である。
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