本研究では、大名家祖先顕彰の構造的な特質を分析し、幕末・維新期の祖先顕彰が持つ歴史的性格を史料にそくしてあきらかにするものである。全体的な研究構想は、次の三つの視点をもとに展開する。(1)長州藩のなかからいかに近代の国家祭祀に結びつくような藩祖祭祀・招魂祭・楠公祭祀が浮上してきたのかという点、(2)いわゆる19世紀を通じて大名家に胚胎する「復古」的な潮流、(3)こうした動向と西洋化といわれる問題との関わりである。(1)(2)の論点と、(3)についてはそれぞれ別個の視点から論じられてきたが、両者を踏まえた新たな議論の展開が求められており、本研究はこの点も焦点を当てる。
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