本研究は、地理情報システムや時系列シミュレーションなどの情報科学の手法を利用して、古代の疫病や飢饉の実態を復元し、こうした災害が当時の社会にどのように作用したか、奈良時代初期から平安時代初期にかけての人ロの推移を明らかにすることを目的とする。 本研究では、コンピューター上に人工社会を作り、経年変化を観察する時系列シミュレーションを行うのだが、本年度は、当初の計画に従い以下を実施した。 (a)大宝二年御野国戸籍のデータを入力し、データベースを完成させた。 各人について一意のIDを付与し、記載情報を入力するとともに、読み取った配偶者・父・母などの属性情報を付加する。入力には学生のアルバイトを雇用した。 (b)疫病・飢饉データベースの作成に着手した。 六国史での疫病・飢饉を集積し、被害人数・発生月・発生年・発生国・種別などを属性情報とするデータベースを作成しており、これは平成20年度も継続する。 (c)旧国を単位とした日本地図をもとにShapefileを作成し、暫定版を公開した。 基礎となるデータは、ESRIジャパン株式会社の全国市区町村界データを利用し、旧国単位に直した。なお、細かい境界を把握するために、総務省統計局の町丁・字等境界データを参照した。データの作成にあたり、学生のアルバイトを雇用し、微妙なデータの修正などは(株)パスコに依頼した。時代により土地利用の在り方が変化しており、古代の海岸線を復原するのが課題であり、さしあたり今年度は吉備周辺と大阪湾について古地形を復原した。次年度以降、より精度をあげることが課題である。 (d)「第1回 古代災害史研究会」を公開で開催した。 研究会では、古環境史研究の方法などを議論した。研究会参加者への旅費を支出した。
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