まず、予定していた業書類のうち、群書類従・続群書類従・続々群書類従・史籍収覧などについて、関係箇所・該当記事の博捜・集積を進めた。同時に前年度に引き続き国立公文書館・国立国会図書館を中心に豊臣政権・豊臣秀吉・「朝鮮出兵」などに関する未刊行資料の調査・蒐集を計った。これら今年度までの調査によって、『豊臣秀吉譜』『朝鮮征伐記』『朝鮮太平記』『征韓偉略』『朝鮮戦談』『征韓紀略』など基本資料の集積も一定規模に達したため、各テキスト間のおける字句の異同分析等への着手をはじめた。 さらに史料収集の過程で、問題点の構造的理解を深める上から、近世日本における朝鮮理解がどのようなものであったのか、追究していく必要性を強く感じたため、当初は予定していなかった内閣文庫中の朝鮮関係の古文献に関する調査・収集を開始した。具体的には朝鮮の地理・歴史・制度にかかわる古典籍類である。 さて、「朝鮮出兵」に関わった近世大名家の伝世史料の調査については、前田氏を対象として金沢市・加越能文庫を中心に調査を実施、島津家については国立国会図書館において『征韓録』および島津家中の覚書を収集した。また、当初調査を想定していた伊達氏については、基本資料である『伊達治家記録』の購入と分析に終始したため、実際の史料調査は21年度以降に実施したい。 豊臣秀吉発給の朱印状および「朝鮮出兵」関係の古文書を編纂した、いわゆる「古文書集」については編纂の意図等を探り、併せて収録された諸資料の真偽をただしていく作業については、前年度試験的におこなった『徴古雑抄』に続いて、『水月古鑑』についてデータ化を終えたが、編纂意図等については後考をまちたい。
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