日本が対朝鮮・中国意識を形成していく前提として、「朝鮮出兵」(大陸侵攻)がもつ意味はきわめて大きい。こうした関心から、研究の全体構想は (1)豊臣政権が行った「朝鮮出兵」についてこまかな実証研究を積み重ねていくと、同時に (2)この戦争がどのように記録され、近世以降どのように記憶・伝承されていったのかを検討することにある。 これまでの研究によって(1)については一定の成果をもっているので、本科研ではとりわけ(2)に主眼をおいて研究計画をたてた。これについて換言すると、この戦争がその後の日朝(日韓)、日中関係に果たした役割、アジア史のなかでの位置づけについて考えていくこととなる。したがって、研究の重点は近世以降の日本社会における「朝鮮出兵」(大陸侵攻)の語られ方を追究することにある。具体的には近世以降に編纂された関係古文書集の編纂意図や軍記物などの編纂物のなかで「朝鮮出兵」(大陸侵攻)がどのような位置づけをあたえられているのかについて検討を進める。
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