研究課題
本研究は、領土問題の当事者の立場に焦点を当てながら、国是としての北方領土返還論が確立し、「北方領土」の国家神話が形成されたプロセスを明らかにすること、さらには、冷戦期に構築された国家神話「北方領土」が、ポスト冷戦期の日ロ領土交渉の進展を阻んでいるメカニズムを解明することを目的としている。本年度は、日本とロシアの意識の差とロシア側の北方領土観を明らかにするために、8月にサハリン、9月にモスクワでき資料収集とインタビューを行って結果をまとめた。北方領土が行政区として組み入れられているロシア・サハリン州は、ロシア国内でも最も強硬に北方領土返還に反対する地域である。返還運動を組織している活動家、州議会議員らと面談したほか、研究者や大学生などの若い層、ジャーナリストらと会って領土問題に対する意識をつかんだ。また、サハリン経由でロシア本土へ休暇に出かける北方領土住民からもインタビューを取った。そこからは、日本の領土要求を不当と考える誤った歴史認識から来る日本への反発と同時に、日本との経済交流や文化交流を発展させたいと願う二つのベクトルを見ることができた。モスクワでは、科学アカデミーを中心に有識者との懇談や資料収集からロシア中央の領土問題認識を探った。全般的にロシアでは、日ロ領土問題はロシア外交にとってさほど重要な問題ではないとの認識が広がっている一方で、ナショナリズムの高揚は激しく、日ロ領土問題解決のプロセスにとっては困難な状況が生まれている
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岩手県立大学共通教育センター『リベラル・アーツ』 3
ページ: 1-20
Proceeding of the 23th joint symposiun of scho-las from the Russian Academy of Science, Far Eastern branch and the district Kansai(JAPAN)
ページ: 57-81