二年目となる今年度は、昨年度に引き続き、(1)中国の現地調査、(2)関連史料の収集作業、(3)慧萼関連研究論文の収集作業、(4)慧萼関連史料の文字データ打ち込み作業を行った。 (1)については、慧萼の時代に活発化した唐代南海交易の拠点を確認するとともに、慧萼が訪問したと想定される泗州に関し、江蘇省〓県西側の沿河に、その城壁跡と思われる痕跡を確認できた。 また、(2)については、東京国立博物館・尊経閣文庫等にて、古活字版『白氏文集』(那波本)書入の調査を行い、今は失われた金沢文庫旧蔵『白氏文集』の慧萼が記した奥書の文字復元を行った。また、大谷大学図書館からは、慧萼関連史料となる同大学所蔵『高野雑筆集』下巻所収「唐人書簡」のカラー写真コピーを入手した。さらに今年度、大谷大学本より古い「唐人書簡」の写本を収める石山寺所蔵「大師文章」の写真版が、『石山寺資料叢書-文学編第三』(法蔵館)として出版され、これも購入した。これら史料収集の成果はいずれも、(4)の作業に反映させた。 (3)については、今年度、特に金沢文庫旧蔵『白氏文集』に関する優れた論考を得ることができた。しかし、中・韓の研究論文の収集についてはほとんどすすんでおらず、今後の海外研究協力者の作業に期待するところが大きい。
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