最終年度となる今年度は、前年度に引き続き、(1)慧萼関連史料の収集と史料集の作成、(2)史料集収載史料の注釈の作成、(3)慧萼関連文献の収集と文献目録の作成、(4)研究論文の作成を行って、(5)これらの成果を収めた報告書を作成した。 その結果、(1)(2)に関しては、これまで慧萼の史料集として広く活用されてきた橋本進吉氏の「慧萼和尚年譜」が収載する史料の約2倍にあたる計77条の関連史料の収集を果たした。また、それに注釈を付す作業も予定どおり終了した。なお、本研究を通して注釈を加えた項目は約200を数える。(3)に関しては、日中の計54の研究論文等の文献目録の作成を終えた。さらに(4)については、研究代表者の研究論文「入唐僧慧萼に関する基礎的研究」に加え、研究協力者葛継勇氏からも「東アジアにおける唐僧斉安禅師像」と題する新稿を寄せて頂いた。これらにより、慧萼の交流史上意義が、東アジアの仏教文化史にとどまらず、東アジア交易史、日本文学史、日本文字文化史と多岐に及ぶこと、しかもそれが以後の東アジア史の展開に多大な影響を与え続けたことを実証的に確認できた。さらに(5)に関し、上記(1)~(4)の成果を一書に収めたA4版一〇四頁の報告書を作成し、これを国内外の研究者・研究機関に配布した。これらによって、広く共有できる東アジア史の貴重な研究素材を活用しやすい形で提供するという本研究の最終的な目標を、予定通り達成することができた。
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