1950年代を中心に京都地域で展開された国民的歴史学運動の展開過程、教育現場・文化行政などへの影響を明らかにするため、以下の活動を研究協力者とともに行った。 (1)継続中の資料調査:京都教職員組合所蔵資料については目録を作成し、概要をとらえるとともに、今後の資料保全作業の見通しを立てた(計5回)。奥丹後地方教職員組合所蔵資料については目録を作成し、全資料を京丹後市史編さん室へ移管した(計2回)。さらに国会図書館等にて関連文献・資料の調査・収集作業を行った(計2回)。 (2)新資料の発掘および聴き取り調査:奥丹後教職員組合教員堀江保次氏所蔵の映像資料を調査した。また戦後京都における科学運動・部落解放運動について東上高志氏(元部落問題研究所長)の聴き取りを行い(計2回)、録音データを原稿化するとともに、氏の手元に紙芝居『祇園祭』の別版があることを確認した。さらに、神話学・日朝関係史研究者の故三品彰英氏(元大谷大学・同志社大学教授)旧蔵資料を守山市にて発見し、内容の調査と目録の作成を行った(計3回)。 (3)研究成果の公表:2009年9月13日に京都教育文化会館で開催された京都教育センター公開研究会にて、研究協力者の生駒佳也(徳島市立高等学校教員)が戦後京都の教育状況について、また櫻澤誠(日本学術振興会特別研究員)が戦後沖縄の教職員運動について、上記(1)の調査成果などを基にした報告を行った。また研究代表者(田中)が三品彰英氏関係資料を用いて、戦前・戦時中の神話学史の論考「三品彰英の神話研究-その出発点」を作成した(『近江の文化と伝統』上巻所収、2010年秋刊行予定)。さらに、昨年度に発掘・再現した京都民科歴史部会所蔵の紙芝居『祇園祭』について、花森重行が「国民的歴史学運動期における政治の多様性-民科京都支部歴史部会の紙芝居『祇園祭』に即して-」と題する論文を公表した(『新しい歴史学のために』275号)。
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