1.東大寺大仏供に関する研究 天皇権威の変遷を明らかにするために、それと不可分の関係にあり、かつ大陸の影響の強い東大寺大仏に関する研究をすすめ、その研究成果を「東大寺大仏と宮-大仏供起源考-」と題して『日本史研究』誌上に公表した。八世紀には天皇の宮と密接な関係にある大仏であったが、一時的な地位の降下を経て、平安京遷都後の九世紀になると宮との関係を離れ、南都の中心寺院としての位置を確立する点を明らかにした。このような変遷は、天皇権威の変遷とも連動していると考えられる。 2.山陵・瑞祥・宗廟に関する研究 (1)日本・中国・朝鮮の資料収集をすすめ、日本と朝鮮に関しては、データを表にし、その校正も行った。中国に関しては、正史や類書を中心に、紙媒体のカード型式にして収集した。 (2)上記資料を活用し、中国や朝鮮の史料と比較しつつ、対外関係や即位儀礼などで活躍する祖先霊を山陵や伊勢神宮などの制度に見出した。七世紀後半に確立した点や、八世紀に前半に八幡神や香椎廟などが出現すること、八世紀後半に平安期を規定する枠組みを形成した点などを明らかにした。研究成果を「七~九世紀の天皇の祖先祭祀-山陵・神宮・廟の関係史-」と題して、栄原永遠男他編『律令国家史論集』(塙書房)に掲載した。 (3)2009年11月21日はびきの市民大学(大阪府羽曳野市)で「東アジアのなかの女性天皇」と題して、祥瑞制度と伊勢神宮の関わりなど研究成果と関わる講演を行った。
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