本年度は、1.「御広間雑記」インデックス項目の作成作業、2.鈴鹿和之日記の翻刻、3.臼井雅胤の分析、4.春日大社の調査、の4点を柱として作業を行った。 1.については、3年かけて作業した「御広間雑記」第102冊~第153冊のインデックスに以前整理した簡略版1冊分(第101冊)を加えた53冊分のインデックス約6200項目(1項目には神社名・神職名・地名などを登録)を、調整の上一覧表として別途作成した成果報告書に掲載した。元禄後半から宝永期にかけて、全国各地の神職が吉田家を訪れていたことがわかるが、地域的な偏差が見出せる。その分析は、今後の課題としたい。2.については、万治3年分を活字化した。家老として吉田家を支えた鈴鹿和之の活動や、同じく吉田家を支えていた萩原兼従の死の前後の様子が具体的になった。なお、新たに同人の手になる寛永期以後の日記があることが判明した。17世紀前半の神祇行政を考える上で重要な史料で、分析には至らなかったが、一部を紙焼した。3.については、伯家神道の基礎を作った臼井雅胤について、17世紀後半に活躍した父定清、兄接伝の活動とあわせて分析した。吉田文庫のなかに含まれる臼井本と兼香公記・白川家日記・稲荷社家日記・西宮神主日記をつきあわすことで、雅胤の活発な活動を跡付け、公家サロンのなかから臼井雅胤のような神学者が登場したことを示すと同時に、国家イデオロギーでも神社祭祀でもなく、祈祷を活力とする神道者として意義付けた。4.については、吉田家との関係分析はできなかったが、都市奈良の動向を知るいくつかの記述を摘記した。この成果は、若宮祭礼の分析として、近く公にすべく準備を進めている。
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