広島県尾道市に所在する真言宗醍醐派西國寺は、すでに平安時代中期に存在の知られる古刹であるが、治暦2年(1066)、永和年間(1375~9)の2度の大きな火災により損害を受けたため、主としてそれ以降に集積された貴重な資料が数多く伝来している。その内容は、仏像・仏画、典籍、聖教類、古文書、世俗画、工芸品など多岐にわたり、さらに境内には数々の堂塔や石造物などもある。資料点数は約2万点で、そのほとんどが初見資料である。 本研究は、所蔵文化財全般の内容を明らかにすることは当然のこととして、密教学はもちろん国語学・国文学、日本史学等の諸学において注目される聖教や典籍類の内容を明らかにし、西國寺における修学・付法活動のみならず、広島県はもとより瀬戸内地域の歴史・文化の解明にも繋げていくものである。
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