本研究は20世紀初頭にイランで生起した2つの運動、立憲革命とジャンギャリー運動を取り上げ、それらの運動とその前後との系譜的な連続・非連続を考察し、政治史・事件史的解明に加えて社会的な側面にも照明を当てることを目的としている。本年度の研究の成果は以下の通り。 1.前年度にイランへの調査出張で収集したイランの主要日刊紙「イラン」、「ラアド」など各紙に掲載されたジャンギャリー運動の記事を系統的に整理・翻訳しデータとして蓄積するとともに、同運動関係基本史料集の完成に向けた基盤を築いた。 2.平成21年12月に、前年度に変更したイギリスへの調査出張を実施した。主としてThe National Archiveに所蔵されているイギリス外務省未公刊公文書ファイルを閲覧し(1919-1921年分)、約600枚分の複写を入手した。それらの一部は解読中である。また、出張中に立憲革命を含む近代イラン社会運動史関係の英語文献の収集に努めた。 3.平成22年2月に、東北大学東北アジア研究センターが主催したシンポジウム「歴史の再定義」において研究発表を行った。これは主に近年公開されたロシア語公文書に基づいて、1920年成立の「ギーラーン共和国」におけるコムニストたちの動向とその後の彼らの論争を詳細に扱ったものである。 4.本年度末までに「イランソヴィエト社会主義共和国(「ギーラーン共和国」)におけるコムニスト政変:その歴史の再構成と歴史認識の変遷」と題する論文を完成させた。同論文は本年中に東北大学東北アジア研究センター出版物に掲載される予定である。また朝倉書店発行予定の図書では、とくにイラン人の箇所でナショナリズムの系譜的な考察を行った。
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