(1)本研究は、9世紀に成立して以降、イラン・トルコ・中央アジア・インドなど、ユーラシアの広大な領域の文章語として共有され、これらの地域の伝統文化の形成に影響を与えた近世ペルシア語文章語の発展と歴史的変容に、ペルシア語の広域拡大の大きな要因であったと考えられる文書行政の書記官僚技術の手引書・文書用例集の分析を通し、光を当てることを目指す。 (2)従来本格的に研究されることがなかったペルシア語書記術手引書を、イランを中心とする諸国の写本所蔵機関で可能な限り網羅的に発掘・蒐集し、ペルシア語書記術関連史料の総合的な詳細書誌情報を研究者に利用可能な形で整理する。 (3)これらの文献から、ペルシア語の文書・書簡の儀礼・規範がどのように発達し、それが国家・社会の秩序とどのような関連性を持っていたのかを明らかにするデータを抽出する。これにより、近代国家成立前のユーラシア・ペルシア語文化圏の歴史における国家・社会と言語の関わりを明らかにする手がかりをつかむ。
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