1.11万3000巻という膨大な文書群の中から効率よく必要な資料を抽出するために、既に刊行されている『清代乾嘉道巴県梢案選』(以下『档案選編』と略称)の中から、棉業・水運業・合股などの業種・経営関係にかかわる資料の抽出を行い、当該資料を原文書より探し出す作業を行い、『档案選編』の文書前後をなす文書を中心に、関連する咸豊期以降の文書をあわせて1000枚の制限枚数について複写をおこなった。 2.持ち帰った複写文書と、既に刊行された『档案選編』所収資料を付き合わせる作業を行った結果、『档案選編』は、経済史料の本体に関する限り、節略は比較的少なく、おおむね原文書に準じて利用することが可能であることが明らかになった。 3.このことを前提に、乾隆・嘉慶・道光の文書に限って刊行されている『档案選編』と、この時期に続く档案館所蔵の未完の咸豊・同治・光緒の文書を対比すると、商業経営形態、客商組織・客商牙人の関係において、より組織的な方向に進んでいることが推定された。 4.今後の研究の進展のためには、11万3000巻という膨大な文書の中から、効率的に必要な経済史資料を抽出する方法を開発することが必要である。巴県档案は、既に全巻マイクロフィルム化されているが、わが国に購入される以前に発売が既に停止されており、日本国内で、原文書を閲覧することが出来ない。かつ、各フィルムを四川省档案館においても、大量の文書を一貫通して閲覧することが出来ず、加えて本年度より、プリント枚数に制限が加えられるようになった。マイクロフィルムには、一文書毎にタイトルが付されているが、タイトル名と内容の相関が錯雑している。効率的に必要な経済史資料を抽出する方法を開発することが必要である。
|