研究概要 |
平成20年度には、朝鮮時代に作製された地図に関する数本の論文を出版した。その中には前年度に投稿した論文も含まれている。また、朝鮮前期における軍事体制に関する研究を続け、『海東諸国記』の中の地図に関わる資料収集と論文作成への準備を進めた。平成20年度に投稿した2本の論文のうち1本が平成21年度中に出版されることになり、もう一本は現在、査読中である。 平成20年度に出版された論文のうち、1本は朝鮮で作成された4枚の世界図に見える日本図に関するものであり、それぞれの日本図の内容を紹介して分析した。特に誤字の解読を行って、日本図の作製方法を明らかにした。それ以外の2本の論文は、両方とも2,3年前に投稿したものであるが、審査に時間がかかり平成20年度の号に掲載されることとなった。この2本は、1402年に「混一彊理歴代国都之図」という世界図を作製した李薈の先祖を、氏族の族譜や朝鮮、高麗、宋、元、明中国の史料によって分析したものである。うち1本では、すべての中国人先祖が実在しないこと、もう1本では高麗時代の先祖のプロフィールの中には虚偽の記載があったことを明らかにした。 平成20年度に行った研究は『海東諸国記』の中の3枚の三浦図に関わる軍事体制と郡県行政担当者であった守令に焦点をあてた。朝鮮東南部にある慶尚道の水軍基地浦に派遣された官僚の人名録や、慶尚道南部と沿岸郡県に任命された守令の人名録を整理した。そして、守令が、朝鮮政府の科挙試験である文科合格者、武科合格者、または蔭官のうち、どれに相当するのかを確認した。この研究は現在も継続中である。さらに、朝鮮後期に作製された地図に見える文禄慶長の役・壬辰倭乱と関連する情報の整理に着手した。特に郡県図を中心に、朝鮮半島にあった陸軍戦場や水軍戦場、李舜臣の碑閣や祠、日本軍が築いた倭城をリストアップした。
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