研究課題
まず、後掲の安冨歩単著において、反日運動の現実的基盤となる地域経済に関して、その一般的性格までさかのぼる形で従来の経済理論を批判的に止揚する視点が提示された。この成果は、日本側現地通貨と癒着と同時に競合関係にもあった現地中国側通貨の登場と安定を考える上での一般理論的考察を内包すると同時に、従来にない日中経済関係再構成を考察していく上で示唆に富む成果でもある。また、柳澤明および松重充浩は、中国東北(満洲)の各エスニック=グループの清代から現代に至る社会・文化変容過程を,文献史料と現地調査の両面から追跡中である。特に、柳澤は、それに関連して,2008年2月に遼寧省大連市・瓦房店市・蓋州市において清代駐防旗人の子孫(満族・蒙古族)の歴史と現況に関する調査を実施した。加えて、古市大輔は、20世紀初頭の中国東北における政治改革の推進と東三省の建省に関して論文を公表し、19世紀後半から20世紀初頭にかけての中国東北における政治構造の変容過程と「東三省」の形成過程などに関する検討を進めた。他方、塚瀬進は、東北をめぐる日中関係の実相について、全体的見通しを提示する論文を発表し、松重も従来の東北地域研究を総括する研究報告をおこなった。以上の成果が示すように、本年度は、日中関係の具体的な分析に入諸前提(研究整理、資料整理、フィールド調査、等)を遂行し、次年度の研究準備を首尾良く遂行することができたと言えよう。
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細谷良夫編『清朝史研究の新たなる地平:フィールドと文書を追って』山川出版社
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東アジア近代史学会編『日露戦争と東アジア世界』
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Stephen R. Mackinnon, Diana Lary, Ezra F. Vogel ed. China at War Regions of China, 1937-45, Stanford University Press, California
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http://da.chs.nihon-u.ac.jp/da/