研究概要 |
トルコ共和国のEU加盟は,2007年を目標としていたが,主としてキプロス問題が影響して,加盟交渉は凍結されている。この問題は,トルコ共和国とかつての領土であったギリシアとの関係が深く関与している。本年度の研究実施状況は,トルコ共和国への資料調査では,イスタンブルのオスマン史料部で,特にオスマン近代化とヨーロッパ化を体現するものと考えられるヒジャズ(巡礼)鉄道の史料収集に従事した。アンカラ大学では,大統領選出の時期と重なったことによる政治の問題にイスラムがどのように係わるかについて研究者と懇談した。トルコ共和国大統領に軍部や野党の反対にもかかわらず,イスラム政党とされる与党の推薦で大統領が選出された,これは,トルコ共和国のEU加盟に大きな影響があると考えられるが,西欧の反応はそれほど過敏ではない。また中東の西欧化国家とされるイスラエルの調査をおこない,パレスチナにおけるイスラムの影響を考察した。国内では,トルコ共和国アンカラ大学史学科ヒュリア=タシュ博士を招請して東京・京都において数次にわたる研究会を実施した。また,オスマン史の第一人者アンカラのビルケント大学史学科教授オゼル=エルゲンチ博士の来日にあわせ,研究交流を行った。これらの研究会には,日本のオスマン史研究者が多数参加し,特に東京では若手オスマン史研究者の大部分が参加し発言した。トルコのEU加盟問題とキプロスについて原稿が完成した。これは,近く山川出版社の『歴史と地理』に掲載される予定である。
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