トルコ共和国のEU加盟は、2007年を目標としていたが、キプロス問題などを要員として加盟交渉は凍結されたままである。EU拡大政策が進行して、マルタ、キプロスのほか東欧諸国が次々と加盟していく中で、EUの主要国であるイギリス、フランス、ドイツの指導者が交代するなど、EU内において様々な問題が噴出してきた。このため、凍結されているトルコ共和国のEU加盟交渉は、なかなか進行する気配を見せていない。特に昨年から始まったアメリカの金融混乱のあおりを受けて、EU自体の経済的混乱が次第に顕著となってき始めた。このような世界恐慌とも言われる金融・経済混乱を背景として、トルコ共和国のEU加盟は、ますます党のいていく気配が感じられる。トルコ共和国内においても、EU加盟を主張する世論は次第に沈静化してきたように感じられる。 このような事態を鑑み、トルコ共和国のEU加盟に障害となっているキプロス問題を考察し、その背後にあるギリシアの動向を調査研究した。さらに、キプロスと極めて状況が似ているマルタについて考察した。ヨーロッパ文化とは異なった周辺小国が置かれている立場を考察し、キプロスがギリシアを背景としながらも、EUの中で主要国間にあって翻弄されている状況を考察した。これらの検討から、トルコ共和国はEUに加盟するならばEU内では人口的には大国とはなるが、様々な点でEU内では従属的立場になる可能性を持っていると考えられる。このため、現時点ではトルコ共和国のEU加盟は保留されていることが最善であろう。
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