研究概要 |
本年度は研究計画の第2年度にあたり、原住民族の近代から現代までを幅広く調査し理解するよう心がけた。主な研究内容は以下の3点である。 第一に、8月に嘉義県阿里山郷のツォウ族の部落(達邦村、山美村)を訪問し、彼らの日本統治期の歴史から、現在の彼らをめぐって起きている原住民族観光業の問題について景観調査とヒアリングを実施した。その成果は藤巻正己他編『グローバル化とアジアの観光--他者理解の旅へ』(ナカニシヤ出版、2009年)所収の拙稿「台湾原住民族社会と観光産業」として発表された。 第二に、2008年10,月〜2009年3月に、台湾大学、中央研究院台湾史研究所、国家図書館台湾分館などにおいて文献調査を行った。『台湾日日新報』『中国時報』『台湾協会会報』『台湾警察時報』『台湾逓信協会雑誌』や各種地図、統計資料などを閲覧・複写・撮影した。これら史料は現在、来年度の論文執筆に向けて読解・分析をすすめている。 第三に、同時期に3回にわたってヒアリング調査を実施した。具体的には南投県信義郷潭南村・東埔村・地利村、同県水里郷民和村などの各村である。各村では、戦後のブヌン族、漢族の進出と交易上の関係、土地所有状況などの問題についてヒアリングした。特に、漢族が原住民の部落に入り交易を行った事例、漢族が原住民の保留地を購入して耕作する事例、原住民社会における女性の役割などに関して興味深い成果が得られたため、最終年度には、さらに掘り下げたヒアリングを試みてみたいと考えている。
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