平成20年8月22日から9月19日まで、ドイツ連邦共和国ブランデンブルク州立中央文書館(ポツダム市)において、レカーン領文書の記録とりを行った。特に、放牧権や木材伐採権の補償をめぐる関係者(領主、農民、下層民、領外の関係者)の間の紛争と調停の過程について調べた。また滞在期間中ベルリン自由大学において「マルク経済協会」の刊行した2つの機関誌の調査を行い、レカーン領領主であるロッホウが執筆した論文の収集を行った。 帰国後、以上の現地での調査によって得たデータの整理と分析を行うとともに、19世紀前半のプロイセン社会史の主要文献を読み進め、レカーン領における社会層の動向を、プロイセンにおける社会問題の中に位置づけようとした。また同領における農業改革の歴史的位置を確認するため、18世紀末の北部ドイツ各地の農法改良の試みについて、検討を行った。さらにロッホウと同時代人の農政家ユストゥス・メーザーの著作の検討ならびに主要論文の翻訳作業を完了させ、肥前栄一氏らとメーザー『郷土愛の夢』(京都大学学術刊行会、2009年4月15日刊)を刊行することができた。この研究によって、ロッホウの創設したマルク経済協会が、同時期にドイツ各地で設立されていたPatriotische Gesellschaftenと同類のものであることが確認できた。
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