本研究は、絶対王政期フランスにおける宮廷の基本構造をあらためて検討し、その多角的な機能を析出することを目的とする。絶対王政期の統治構造はその「権力」のみならず「権威」という側面の解明が求められており、両者の結節点である宮廷自体の構造に焦点をあて、宮廷を国王や王族、王家の役人や宮廷貴族などの「人間集団」自体を指すものとして捉え、その人的配置、位階秩序、社会的結合関係の解明を通して、宮廷のもつ多面的な機能や複雑な構造的特質を解き明かすことを目的としている。 昨年度は、前年度に引き続きフランス宮廷の具体的な機構・組織構造の解析を着実に進めた。なかでも国王の居室を管理し、その結果国王のごく身近に奉仕していた国王寝室部の諸役人、とくに寝室部常任扈従官および4人の寝室部第一扈従官についての分析を行った。また、それ以外の宮廷各部署についても、可能な限りの既存研究・史料を収集し、その人的配置や職務内容、集団としての特質などを精査している。また、位階秩序や宮廷儀礼のもつ意義については、ル・ロワ・ラデュリの研究を手がかりに、サン=シモン公の回想録などを新たな視点から読み直していく試みにも着手した。ただし、宮廷の複雑な構造については、下部にいくにしたがって構成人員などの基本となるべき情報がまったく欠落している部分も多く、まったく手がつけられない部局もまだ多く存在する。この点、とりわけ宮廷の下級役人についてはさらに一層の資史料の収集・分析が必要であろう。なお、校務の関係で今年度行えなかった史蹟史料調査を次年度に実施する計画である。
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