平成20年度の科学研究費による研究内容と実績は以下の通りである。 合衆国における公教育は、キリスト教諸教派と密接な関係を保ちながら進展してきた。とりわけ、19世紀から20世紀前半にかけて先住民に対する公教育については、各州政府ではなく連邦政府の所管であったため、教会と国家のあいだはいっそう密接であり、またそのために矛盾や対立も抱え込むことになった。20世紀初頭までの連邦先住民政策において、少なくとも国政レベルでは、先住民のキリスト教化は自明視されてきた。けれども、公教育の領域で教会と国家(連邦政府)の関係が密になればなるほど、政教分離の原則と実態の乖離や教派間の対立も表面化し、さまざまな矛盾が露呈することになったのである。 これらの点を踏まえて、キリスト教諸教派に焦点をあて、合衆国の先住民教育政策において教会と国家のあいだにはどのような関係があったのかを対立や矛盾にも留意しながら検討した。その成果は、(水野由美子)「先住民教育政策とキリスト教」と題した拙稿(特集/「他者教育」に見るアメリカ『歴史評論』707号、2009年3月号)として発表した。
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