平成21年度の科学研究費による研究内容と実績は以下のとおりである。 今年度は、合衆国における法的地位としての<市民>(Citizen)概念の変遷とその歴史的意義に関して<インディアン>という地位身分と<国民>(national)という地位身分との比較という観点から検討を行なった。これまで、<インディアン>という地位身分を付与された保留地の住民の地位の変遷については拙著『<インディアン>と<市民>のはざまで-合衆国南西部における先住社会の再編過程』(名古屋大学出版会、2007年)のなかで、主に南西部の事例に即して検証を行なってきた。この基礎的研究を踏まえて、<市民>・<インディアン>という地位身分の創出過程のみならず、19世紀末以降の合衆国の海外属領の住民に与えられた<国民>(厳密にいえば、市民ではない国民non-citizen national)という地位身分の創出過程にも着目し、三者を比較・対比しながら、<市民>概念の変容過程とその意義を検討した。その成果の一部として、日本アメリカ学会年次大会(平成21年9月20日於名古屋大学)のシンポジウムで口頭発表を行なった。
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