今年度は、1960・70年代におけるアメリカ先住民の社会運動について、とくに米国中西部の平原部族に焦点をあてて以下の研究を行った。 まず、サウスダコタ州のスー族が、1960年代初頭の連邦管理終結政策の動きに対して、どのように対応したのかを、当時のスー族評議会議事録や新聞記事などを資料に考察した。これは、論文「スー族と連邦管理終結政策-1960年代前半のサウスダコタ州管轄権法」として『立教アメリカン・スタディーズ(立教大学アメリカ研究所)』に発表した。スー族は、保留地における州の管轄権拡大に対して、ときに州レベルで政治運動を展開することによって、抵抗を試みたことを明らかにした。 資料調査としては、関連の研究書や博士論文の収集とともに、マイクロフィルム・フィッシュで購入可能な史料の一部を取り寄せた。また夏期休暇を利用して、米国にて2週間の史料収集を行った。サウスダコタ大学図書館にて、1960・70年代の先住民団体の記録や機関誌、オーラルヒストリーの記録を閲覧・複写した。さらに休日を利用して、周辺のスー族保留地、ウィネバゴ族保留地を訪れた。帰国後、これらの資料を分析し、当時の先住民運動と自治、ベトナム戦争従軍、貧困・アルコール問題などに対する一般の先住民の意識と見解を検討した。今後は、1960・70年代に西海岸地域で展開した先住民運動にも注目し、連邦政策に及ぼした影響について考察を深め、論文を執筆していきたい。
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