平成21年度は、主に米国西海岸地域において1960・70年代に展開したアメリカ先住民の社会運動に焦点をあてて検討した。夏期休暇中の2週間、米国にて文献資料を収集した。まず、カリフォルニア州でアルカトラズ島占拠に関する文書を調査し、次にワシントン州で北西部沿岸地域の部族による漁業権運動に関する史料を閲覧・収集した。その結果、当時の運動団体の記録や機関誌、新聞記事などを通じて、運動のより複雑な展開と州・連邦政策への影響が明らかとなった。 最終年度の本年は、学会報告として、日本アメリカ学会年次大会アメリカ先住民分科会にて、60・70年代の先住民運動に関する近年の研究動向について発表を行い、有益なコメントを得た。また、共著で「ボスケ・レドンド・メモリアルーナヴァホとメスカレロ・アパッチの強制移住の地」を執筆し、先住民と歴史展示の関係について論じた。今日のボスケ・レドンドをめぐる表象の変化は、60・70年代を通じて、先住民が歴史的記憶の回復にむけて働きかけた結果であることを示した。 過去3年間の調査では、米国各地(中西部・南西部・西海岸・北西部)の先住民運動に関する一次資料を収集・分析することに集中した。これらからは、各地の運動の傾向とともに、ローカルな先住民運動が連動し、ナショナルな動きへ広がった過程を把握できる。今後は、当時の他のマイノリティ運動との相関関係をとらえながら、さらに考察を深めたい。
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