研究課題/領域番号 |
19520629
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古谷 大輔 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (30335400)
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研究分担者 |
中本 香 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (30324875)
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キーワード | 近世ヨーロッパ / 複合国家 / スウェーデン / スペイン / 帝国 / 戦争 / 国家形成 / 国家論 |
研究概要 |
本研究は、近年のヨーロッパ近世史研究で注目されている複合国家論において典型例とされているスペイン・スウェーデンを例に、スペイン継承戦争・大北方戦争・七年戦争といった国際戦争の影響下に生じた政治・社会変動に着目しながらヨーロッパ周縁部における複合的国家編成の歴史的変化を検討するものであった。平成21年度は本研究課題の最終年度であり、平成19・20年度に実施された調査を踏まえ、議論を整理した。スウェーデンの見地からは、戦争により縮小した版図が戦後の国富増進のための施策適応範囲として認識される過程から、一なる「スウェーデン」という空間的範囲理解の形成を確認した。また戦後の国家再編を目的とした資源活用の議論から、独特な自然認識と環境決定論の思潮を背景に、一なる「スウェーデン」の空間的範囲に住まう人間集団の特徴を議論する傾向と後世の民族観への展開を確認した。スペインの見地からは、七年戦争以降の国家再編過程において、イベリア半島とアメリカ大陸とを別個の市場として発展させつつも両者をつなぐ自由主義的経済政策が企図され、両者の相互補完によって帝国全体の経済発展を模索する過程が確認された。以上の見地を総合するならば、バルト海という内海に閉ざされたスウェーデンでは国家再編過程で複合的国家編成が理念としての一なる「スウェーデン」の模索に結実し、大西洋を挟みアメリカ植民地を有するスペインについてはアメリカ植民地とイベリア半島を包含する複合的国家編成を相克する統合理念は模索されなかったものの、自由主義的な貿易体制で両者を結ぶ制度上の相互補完的な連携関係としての「スペイン」に結実したと言える。本研究で得られた最終的な成果は報告集として印刷されたが、スペイン・スウェーデン双方の見地を比較させた複合国家論として学術的論文に整理してしかるべき学術雑誌に公開する予定である。
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