本研究の柱は、以下の4つである。 (1)ローマを中心とする中部イタリアの諸都市の比較対照研究 (2)北イタリアの諸都市の比較都市研究 (3)『健康全書』写本特徴の研究 (4)南イタリアの諸都市の比較対照研究 このうち本年度は(1)ローマを中心とする中部イタリアを中心におこなう計画であった。そのために、8月にイタリアにおいて、ローマの市庁舎とアウレリアヌス市壁の実地調査、および中世都市の景観、構造をよく遺しているとされるトスカーナ地方の都市のうち、シエナ、ピサ、ルッカ、フィレンツェについても、とりわけ城壁と市庁舎に注目した実地調査をおこなった。特に、ローマについては、11月に、イタリア都市計画の権威であるローマ大学建築学部のファリーニ教授が来日されたのに際して、イタリア都市の特徴について議論するとともに、とりわけローマにおける古代建造物の保存と活用について意見交換をした。ローマの城壁については、COEプログラムとの関連もあり、古代日本形成の特質解明の研究教育拠点「古代宮都の比較研究」の報告書に研究成果をまとめた。 また、(3)の『健康全書』にかかわる研究については、一般向けの雑誌『VESTA』にその内容の紹介の連載を担当し、西欧中世史研究会で研究報告をおこなった。さらに、2008年1月に、フランス国立図書館所蔵の写本Ms 9333のファクシミリ版が刊行されることが明らかとなったので、これを購入することにした。この写本の納入は年度末になるために、このファクシミリを用いる考察は2008年度以降におこなう予定である。
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