本研究の柱は以下の4つである。 (1)ローマを中心とする中部イタリアの諸都市の比較対照研究 (2)北イタリアの諸都市の比較対照研究。 (3)『健康全書』写本特徴の研究。 (4)南イタリアの諸都市の比較対照研究 このうち本年度は、昨年度に引き続き(1)ローマを中心とする中部イタリアを中心におこなう比較対照研究計画については、8月にイタリアにおいて、ローマ大学建築学部のP.Falini先生とローマ市について意見交換をしたほか、アメリア、フォリーニョ、アッシジ、トーディ、ペルージャ(以上ウンブリア)、ヴィテルポ(ラツィオ)について、中世都市の景観のなかでとりわけ市庁舎に注目しながら実地調査をおこなった。また、(2)北イタリアの諸都市の比較対照研究については、アルプス越えの拠点でありローマ都市の遺構を残すアオスタ、古代ローマと近世に都市計画が大きくなされたとされるトリノ、百の塔の都市と言われたほど中世都市として繁栄を誇ったとされるアスティについて、都市計画プランと貴族の塔(城館)を中心に、実地調査をおこなった。 また、(3)の『健康全書』にかかわる研究については、一般向けの雑誌『VESTA』にその内容の紹介の連載を引き続きおこない、中世後期から近世初頭にかけて、「健康」に気を遣うことができる支配者層の人々の意識についてまとめた。さらに、2008年1月に購入したフランス国立図書館所蔵の写本Ms9333のファクシミリ版については、ファクシミリ版に合わせて刊行される予定であった研究書の刊行が遅れており、現在もまだ刊行されていない。そのため、この点に関する多角的考察は2009年度に持ち越した。
|