本研究の柱は以下の4つである。 (1) ローマを中心とする中部イタリアの諸都市の比較対照研究 (2) 北イタリアの諸都市の比較対照研究。 (3) 『健康全書』写本特徴の研究。 (4) 南イタリアの諸都市の比較対照研究 このうち本年度は(2)北イタリアの諸都市の比較対照研究のために、9月にイタリアにおいて、ミラノ大学文学部中世史研究室およびボローニャ大学文学部中世史研究室を訪問し、ミラノ大学のG.キットリーニ教授、ボローニャ大学のM.モンタナーリ教授、M.G.ムッツァレッリ教授と意見を交換したほか、国立ボローニャ公文書館における国際セミナーに参加して、ボローニャ中世史の貴重な史料の実物見学および最近のボローニャ市の遺跡発掘と保存状況を確認した。同公文書館のR.リナルディ氏にはその後もボローニャ中世史の史料入手について相談をしている。このイタリアの滞在の間には、ミラノ、ボローニャを拠点として、ベルガモ、ブレッシャ、コモ、モンツァ、パヴィア、モデナ、フェラーラ、ヴェローナ、パドヴァにおいて実地調査をおこない、多くの都市の比較を可能とした。 また(1)に関連して、ローマ大学建築学部のP.ファリーニ教授の来日によって、アッシジについて意見交換をする場を得た。以前ファリーニ教授とおこなった意見交換は、『地中海ヨーロッパ』における地中海ヨーロッパ都市の総説に成果としてあらわれている。 (3) に関連して、昨年度入手できなかったParis写本9333の解説(本来ファクシミリ本と同時に刊行予定だったが、2009年刊行)を入手して、最新の研究を踏まえてその特徴をとらえることができた。『健康全書』が持つ食文化の伝統は、「コンヴィヴィオの食卓」に反映している。
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