本研究の柱は以下の4つである。 (1)ローマを中心とする中部イタリアの諸都市の比較対照研究(2)北イタリアの諸都市の比較対照研究。(3)『健康全書』写本特徴の研究(4)南イタリアの諸都市の比較対照研究 最終年度にあたる本年度は実地調査としては、(4)の南イタリアのカンパーニャ地方の諸都市(アマルフィ、ソレント、ナポリ、ベネヴェント)についての現地調査および(1)に関連してローマ近郊の重要な歴史的建造物が残るスビアコとアナーニの調査、(2)に関連して北東イタリアの都市(ヴェネツィア、アクイレイア、トレヴィーゾ、ウーディネ)の調査をおこなった。特にヴェネツィアにおいては、文書館学芸員のダル・ボルゴ氏の協力を得て、ヴェネツィア国立文書館における各種文書を閲覧した。また、昨年に引き続き、ローマ大学建築学部のファリーニ教授と、日本とイタリアの伝統的な歴史都市空間について意見交換をおこなった。北イタリアについては、ミラノ大学のガンベリーニ氏が来日されたのを機に意見交換をおこなった。日本においては、東京大学の高山博教授および東京芸術大学の野口昌夫教授などと中世イタリア都市研究について意見交換をおこない、東京地区での資料を調査した。 その成果の一部として8月の京都で開催された「中・近世ヨーロッパにおけるコミュニケーションと紛争・秩序」研究会において、「イタリア都市の中心空間」と題する報告を、「Bologna Piazza Maggioreの形成」と題する報告を富山で開催されたイタリア中世史研究会においておこなった。 (3)の『健康全書』写本研究については、文学部吉田孝夫教授の協力を得て、パリ国立図書館蔵MS 9333および、16世紀に刊行されたドイツ語版が再版されたのを機に、その内容のデータ化を進めた。 なお、本年度も関連する文献の収集もおこなった。この成果は、ホームページで公開している。
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