本年度は、まず、イングランド教会の社会改革に関する文献の収集を行った。特に当該テーマに関する最新の研究を収集するとともに、アングロカソリック派の当時の文献をBack-In-Print等で収集し、分析した。また、マイクロフィルムリーダーおよびThe Timesのマイクロフィルムを購入・整備し、イングランド教会の社会改革に関連する記事の検索を実施した。ただし、1941〜1942年度分の整備にとどまり、次年度以降に継続することとなった。そのほか、国立国会図書館東京本館の所蔵する1930年代のイングランド教会の社会改革に関するパンフレット類を調査・分析し、基礎的な資料を作成した。2008年3月にはロンドンのBritish Libraryにて資料調査を実施した。そこでは特に、V.A.Demantなど、イングランド教会のアングロカソリック派の社会改革論に関する文献を分析し、基礎的な資料を作成した。これらの研究作業の成果の一部は、「20世紀イギリスの国民的アイデンティティとキリスト教-イングランド教会の社会的役割-」(『多文化社会研究会報告』第5号)などにおいて公表した。アングロカソリック派の社会改革は、第一次世界大戦期の信仰復興運動にさかのぼるものであり、彼らは、特に失業問題が深刻化した1930年代に、中世のギルドの復活を構想して独自の資本主義批判を展開した。彼らはモールヴァン会議でも金融批判、銀行批判を展開し、イングランド教会の指導者ウィリアム・テンプルを支持して、福祉国家への動きに一定の役割を果たした。
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