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本研究では、ディアスポラを故国のナショナルやローカルな諸組織との間で相互的なネットワークによって接合する国外のエスニック・コミュニティと定義し、とりわけネットワークの相互性、重層性、多拠点性に注目する。時代を第一次世界大戦直後から両大戦間期に定め、東欧諸国のなかでもハンガリーとチェコ・スロヴァキアに焦点をあてて取り組む。2年目である今年度は、研究実施計画に挙げたチェコ・スロヴァキアとディアスポラ社会の相互関係に関する資料を収集する一方、国民国家とナショナリズム、ナショナル・アイデンティティと移民との関係性について取り組んだ。具体的には、近代以降のハンガリーの政治・社会状況の変動に伴い、本国と移民コミュニティとの関係性がどのように変化したのか、そしてハンガリーの国民共同体の形成と拡大にいかなる影響を与えたのかを考察した。海外調査はアメリカ合衆国とハンガリーにおいて行い、アメリカの国立公文書館とクリーヴランドの公立図書館ではアメリカの移民コミュニティの動向について、ハンガリーの国立図書館ではハンガリー政府の移民政策に関する資料を収集した。その結果、とりわけ両大戦間期に関しては、第一次世界大戦の敗戦に伴うハンガリーの領土分割によって、本国においてだけではなく、移民コミュニティにおいても、国民共同体の存在を再確認し、その結合を強化する必要性が生じ、「世界のハンガリー人大会」の開催などの活動が活発化していた点を確認することができた。そして、ファシズムに批判的だったアメリカのハンガリー系コミュニティがナチスと連携するハンガリーのホルティ体制を支持した背景には、ホルティ派が考案した「聖イシュトヴァーンの国家理念」が移民コミュニティの再結合と統合に恰好な理念であったことが明らかになった。
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