本研究では、スイス、ルツェルン山岳部の古い民間信仰の世界(亡霊・ドラゴン・地の精・占い・魔術など)に関する資料を現地で収集、その宗教世界の細部を検証し、それらが16~17世紀の体制教会による教義の統一化(宗派化)の時代をくぐり抜け、啓蒙の時代(18 世紀)の科学者たちの批判にも耐え、19 世紀、ロマン主義の時代に息を吹き返し、20 世紀には国際情勢(第二次大戦期のドイツとの対立)による方言の再評価(標準ドイツ語への反感と郷土の古い言語の見直し)とも結びつき、宗教性を失った伝説の形で継承されてきたことを明らかにした。
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