昨年度に続き、古墳時代の豪族居館、群馬県伊勢崎市今井学校遺跡の発掘調査を実施した。ポイントは西辺外郭施設における張り出し部の有無の確認、東南部の濠の行方、柵列の構造把握、内部の大型竪穴住居址、1号住居の構造・年代の確認、中央部付近の遺構検出などである。その結果、(1)西辺中央には張り出し部は無く、出入り口と考えられる土橋が確認された。(2)南東部の濠が検出されたが、そこでコーナーを形成せずに、粕川に向かって直線的に延び、浅くなって途切れてしまうことが明らかになった。(3)柵列は以前北部で確認されていた芯々約90cm間隔の円形の掘り方をもつピットが大小交互に連なるもので、4本ごとに控え柱を伴う構造であることが追認された。(4)1号竪穴住居址は北東辺の中央に竈を持つもので、9号住居址のようなL字形竈ではないことが知れた。また、4本の主柱穴を有し、竈に向かって右手に貯蔵穴が存在することが推定されるようになった。(5)1号住居址からは大量の土器が出土した。その器種構成や形態・技法的特徴、伴出須恵器の年代観等から、6世紀初頭という時期が判明した。(6)中央部南側の空間利用を検討しようとしたが、残念ながら大規模な攪乱が認められ、元々の遣構の有無はつかめなかった。(7)1号住居址から鉄鎌が出土し、農具の所有形態について一資料を提供した。(8)1号住居址から赤色顔料が確認され、群馬県内の竪穴住居址出土資料を集成した。(9)円筒形土製品が1号住居址から出土し、竈の構築材の可能性を想定した。以上の成果は、現地説明会で公開した。なお、前年度の成果は、地元、伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館で『2007年度今井学校遺跡調査成果展』として展示し、新潟大学旭町学術資料展示館でも企画展を開催した。併せて各々公開講演会を実施した。また、日本考古学協会2008年度総会で研究発表した。その他、研究成果を『國學院雑誌』に掲載した。他に家形埴輪のデータ集成作業を継続している。
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