最終年ということで、昨年度に続き、古墳時代の豪族居館、群馬県伊勢崎市今井学校遺跡の発掘調査を実施した。ポイントは西辺外郭施設における出入り口施設の精査、柵列の立面構造把握、内部の大型竪穴住居趾、1号住居のカマドをはじめとする住居構造の確認、南辺中央部付近の出入り口施設の有無検討などである。その結果、(1)西辺中央には確実に張り出し部は無く、出入り口の地山掘り残しの土橋が幅2.5mで確認された。(2)南辺の柵列は中央部で切れることはなく、続くことから、その部分には張り出し部や出入り口施設が無いことが明らかになった。(3)柵列は、立面方向の断ち割りによって、内部側の控え柱は直立することが判明し、別材を貫で連結することが想定されるようになった。また、深さも120cmと60cmの深い・浅いが交互に配されていることが判明し、地上には3mの高さの柵木が存在しうることを明らかにした。併せて地層剥ぎ取りを行った。(4)先回の調査で、1号竪穴住居趾は9号住居趾のようなL字形竈ではないことが知れたが、今回の調査で、竃の袖芯には円筒形土製品が使用されず、礫が利用されていることが明らかになった。(5)先回、4本の主柱穴を有することが判明したが、その柱の根固めに礫が大量に使用されていることが知れた。(6)竈に向かって右手に位置する貯蔵穴にはL字形に土堤が伴い、蓋が架かっていたことが想定されるようになった。穴の平面形は円形である。(7)竃に架かっていた土器は殆ど無かったが、その周辺からは使用時の様子を復元できるように完形に近い土器が多く確認できた。以上の成果は、現地説明会で公開した。なお、前年度の成果は、地元、伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館で『2008年度今井学校遺跡調査成果展』として展示し、新潟大学旭町学術資料展示館でも企画展を開催した。併せて各々公開講演会を実施した。研究成果は雑誌か考古学のシリーズ本で発表予定である。
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