本年度は、京都府域に所在する弥生時代遺跡情報の悉皆的収集をおこなった。その方法としては、当初は発掘調査報告書等の閲覧からの情報取得をおもに予定していたが、効率を重視して、京都府教育委員会があらたに改訂発行した『京都府遺跡地図』最新版と遺跡台帳から、弥生時代関連の記載がある遺跡を網羅的に抽出する方法を採用した。この場合、個別遺跡の情報としては、おおよその帰属時期と代表的な遺構や遺物程度のきわめて粗いものしか得られないが、二万五千分の一地形図に遺跡範囲が示された体裁であることから、数値地図と重ね合わせることにより、パソコン上で容易に遺跡所在地の位置情報(国土座標や標高)や遺跡範囲の暫定面積を取得することが可能である。したがって、今回は弥生時代遺跡の位置情報リストとして整備し、今後それぞれの遺跡の詳細内容については調査報告書や現地踏査によって充実させていくこととした。集落の広さという空間情報をパソコン上で取り扱っていくうえで、その3次元的な位置情報は必要不可欠なものであって、今回作成を進めた遺跡リストは、今後の遺跡間の比較検討に重要な意義を持つものと考える。 居住人口復元などのシミュレーション実施は、収集情報が不足しており、実施に至らなかったが、歴史人口学関連の業績を多数検討し、今後の考古学への応用についての資料蓄積に努めた。人口を取り扱った考古学的研究は極めて事例が少ないため、関連する研究成果の集成だけでも今後の展開に重要度が高いものと考えている。
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