後期旧石器時代の人類の居住のあり方を類型的に把握し、国際比較を行うことが目的である。研究代表者はこれまで実証的に調査を進めてきた新潟県小千谷市真人原(まっとばら)遺跡の成果をこのプロジェクトに適合するよう組み替え、作業を行った。黒曜石産地分析の結果、信州和田峠だけでなく、青森県男鹿、深浦の黒曜石が真人原遺跡A地点まで運ばれていることが明らかとなった。居住の類型を解釈する上で重要な成果であった。 2008年6月に本研究課題に関係したシンポジウムを首都大学東京で開催した。日本旧石器学会と日本第四紀学会の共催の形とし、ドイツの著名な研究者N.コナード教授(テュービンゲン大学)、0.イエリス博士(ローマゲルマン中央博物館)を招聘して、旧人・新人交代劇のヨーロッパの様相と居住類型、ならびにその年代学的背景について報告と議論を行った。居住類型との関連で重要な石材資源の開発と獲得活動は、ヨーロッパでは異なる産地のフリント素材の獲得をめぐって後期旧石器時代の後半で多様な研究の蓄積がある。東アジアでは、近年朝鮮半島において、蛍光X線分析などで産地分析が可能な黒曜石に関する関心が高まり、日本の黒曜石分析と同じ基盤で議論できる条件が整いつつある。 真入原遺跡の小規模な居住痕跡と石材獲得の範囲の問題を関連させることで、線形飛び石状の回帰モデルを提出できる可能性を議論した。
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