本年度は春秋時代墓葬編年の基準となる青銅器の編年をおこなった。 春秋前期から中期前半では煮炊器の無蓋鼎、盛食器の〓、酒器の方壺、水器の盤・〓といった西周後期以来の器種を基本としており、地域ごとの違いは小さい。 春秋中期後半になると敦・鎌壷・鑑といった新しい器種が出現するとともに、〓・盤・〓といった伝統的な器種も器形を変えるなど、青銅礼器が大きく変化する。基本的な器種は有蓋鼎、〓・敦、方壺、〓・盤だが、地域差が目立つようになる。汾水流域・中原では楕円形型の敦や無蓋の罍を、南陽盆地・両湖平原では蓋身型の敦と有蓋の罍を特徴とする。河南中部は上記の地域の中間的な様相を示す。例えば、無蓋の罍などは汾水流域・中原に近いが、蓋身型の敦などは南陽盆地・両湖平原に近い。山東は扁平な鼎、缶などが特徴である。渭水流域では中期前半までの様相が継続している。 春秋後期前半になると基本器種のうち〓が少なくなり、代わりに蓋豆が多くなる。汾水流域・中原では楕円形型の敦、無蓋の罍、淮河中上流域・南陽盆地・両湖平原では球形型の敦、有蓋の罍、動物型の〓、山東・河北北部ではやや扁平な鼎、脚部が高い蓋豆などを共通とする。河南南部はやはり中間的で、盆などは中原に近いが、蓋身型や球形型の敦などは南陽盆地などに近い。渭水流域ではやはり変化は見られない。 後期後半になると扮水流域・中原は矮足化した鼎(矮足鼎)、鬲型鼎、合身型敦、無蓋の罍などを共通する。渭水流域は汾水流域・中原に近いが、敦や罍を欠く。淮河中上流域・南陽盆地・両湖平原は脚が高い鼎(高足鼎)、球形型敦、有蓋の罍などを共通とする。山東・河北北部はやや扁平な鼎、球形型の敦、脚部が高い蓋豆などが共通する。
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