昨年度に引き続き、国内に収蔵されている西アジアの都市形成期(ウバイド~ウルク期)の土器資料を観察して土器製作技術について比較分析した。本年度は、古代オリエント博物館に収蔵されているウバイド彩文土器のゴブレットおよび直線状外向鉢などを詳細に観察し、実測図を作成するとともにデジタル一眼レフカメラにより撮影記録を行った。 同時に、こうした土器資料の観察と併せて、昨年度まで実施してきた屋外の小型土器焼成窯での焼成実験の成果を検証するために、屋内に設置してある電気焼成窯を用いて彩文土器の顔料吸着実験を行った。屋外での焼成実験とほぼ同様の環境(時間経過と昇温の相関)をプログラム設定して、電気窯にて屋外での焼成状況を再現し、とくに二酸化マンガンと酸化第二鉄の顔料の吸着に関する有効性を検証実験した。 検証実験の結果、900℃以上の高温帯を約1時間持続させることで、ウバイド彩文土器に近いかなり硬質な仕上がりとなり、二酸化マンガン(黒色顔料系)は器面に十分に吸着することを確認した。また、酸化第二鉄(赤褐色系顔料)に関しては、900℃以上の高温帯を約1時間維持するだけでは、彩文の吸着が不十分であることも確かめた。さらに、ウバイド彩文土器に特徴的な多重色調(赤褐色~黒褐色)は、酸化第二鉄による発色であることも追認できた。いずれも屋外での焼成実験の成果と合致する結果となり、これまでの一連の焼成実験が有効性をもつことを検証できた。 以上の研究成果について、日本西アジア考古学会および早稲田大学考古学会にて研究発表し、論文等でも成果の公表に努めた。
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